長い目で見れば・・・
こんにちは。
先日、担当している少年事件の少年に対し、観護措置をとる旨の決定が出ました。
「観護措置」というのは、家庭裁判所に送致された後少年審判までの間、少年鑑別所で規則正しい生活をさせながら、心理テストや面接等を通じ、非行の原因や進み具合を調べるというものです。裁判官は、この結果も踏まえ、少年が更生するためにどれが一番良い方法か考えることになります。
観護措置がとられると、審判まで約4週間、身柄が拘束されることになります。通常は逮捕勾留が先行しているので、少年としては観護措置なしに審判を待ちたいところ。
しかし、ここで非行の原因をきちんと調べず、中途半端な審判をしてしまうと、せっかくの更生のチャンスをふいにしてしまうことになりかねません。ですから、少年の将来のために、裁判所と一緒に更生への道を探っていくという付添人の立場としては、安易に「観護措置は不要」という意見を述べるべきではないと思っています。
今回の件でも大いに迷い、結論として「観護措置は不要」という意見を述べました。理由としては、今回の非行が、人に直接的な被害を及ぼすようなものではなかったこと、今まで休まず学校に通っていたこと、4月の新学期からも後れることなく通わせてあげたかったこと、身柄拘束による欠席により、退学や留年の虞があること、非行がそれほど進んでいないこと等が上げられます。
結果として、冒頭で述べたとおり観護措置決定が出ました。
予め「観護措置は不要」との理由を記載した意見書を裁判所に提出した上で、裁判官と面接をしました。そして、裁判官と一緒に悩みました(思いの外時間をとってくれました。)。観護措置をとった場合にデメリットがあり、それが少年にマイナスの影響を及ぼすことは裁判官にも十分伝わりましたが、ここで非行の原因をきちんと探っておくことのメリットと、観護措置をとった場合のデメリットを天秤にかけると、前者が上回るというのが理由でした。
私が好きな言葉に、「人間万事塞翁が馬」という言葉あります。
少年事件を担当したとき、少年に、「君がこれまで生きてきたより何倍もこれから生きていくんだから、大人になってから今回のことを『あのとき捕まって良かったな』と思えるような人生にしよう。だから、少し遠回りになるかもしれないけど良いチャンスをもらったと思って一緒に考えよう。」と言っています。
少年にとっては、家族や学校、部活、今の友人といった狭い世界が全てで、ストレートに進んでいかないと人生が終わったように思えるのでしょうが、長い人生から見れば、留年したこと、浪人したこと、少し人から後れたことなどどうってことはありません。本人の気持ちひとつで新たな素晴らしい出会いや人生が開けていくものだと思っています。
少年事件を担当するとちょっと熱くなってしまいます。修習生がいるときだったら良かったのですが(笑)。
(アソ弁)
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