相続人ではないけれど、相続人と一緒になって遺産分割協議に参加できる方法があります。それが相続分の譲渡です。遺産分割協議が整うまで、何年にも及ぶ場合も少なくないのですが、中には、一日も早くお金が欲しい、遺産分割が終わるまで待ってられない、という人もいます。そんなとき、相続分を譲渡することで、遺産分割が終わる前にお金を手にすることができるのです。譲渡を受けた人が、譲渡した相続人と同等の立場で遺産分割協議に参加することになります。
相続分の譲渡を正面から定めた規定はありませんが、相続分を譲渡した後の取戻権があることから(民法905条)、当然、相続分の譲渡ができると解されています。
頻繁に使われるような制度ではないので、知らない弁護士も多いと思います。
さて、先日、相続分の譲渡を使う機会がありました。
事案は、養子縁組をしていない被相続人の子と被相続人の後妻が、被相続人の不動産について遺産分割協議をしないまま、今度は後妻が亡くなってしまい、今日に至っているというもの。依頼者(被相続人の子)の希望は、被相続人名義のままになっている不動産の名義を換えて子供に残してあげたいというものでした。しかし、被相続人の死亡から約60年、後妻の死亡から約50年が経過しており、後妻の相続人を調べてみると、相続や代襲相続を繰り返し、なんと20名近くいることが分かりました。
20人もの人が集まって遺産分割協議をしたら、まとまるまでに何年かかることか(そもそも集まるか?)・・・と悩んだ末、相続分の譲渡を利用することを思い立ちました。つまり、一人ずつ個別に接触し、それぞれから地道に相続分の譲渡を受け、合わせ技一本にするという構想です。
構想から約1年、全体を相続することに成功しました。
ひらめくことができる、これは弁護士の重要な資質です(と、ボスがよく申しております)。
(兄弟子)