読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

未来創造弁護士法人(横浜・藤沢の法律事務所)

横浜(本店)と藤沢(支店)にある法律事務所で日々奮闘する弁護士とスタッフが、気の向いたときや機嫌のいいときに更新する事務所日記です。

【未来創造弁護士法人 3つのモットー】

1 依頼しなくてもOK 気軽に相談していただけます!
2 スピードは価値 早期解決を最優先します!
3 お客様の希望をじっくり聞きます!専門家の意見をしっかり伝えます!


【第73回SUC三谷会】 遺産分割研究 その2

SUC 三谷会

遺産分割研究の2回目は、主に遺産分割の対象となる財産の範囲について研究しました。

遺産でなければ遺産分割の審判を申し立てても裁判所は分割の審判を出してくれません。相続人の同意があれば審判の対象となる財産もありますので注意する必要があります。

 

 

第73回SUC三谷会 遺産分割勉強会レジュメ

担当 小島 

平成28年11月14日

第1 相続財産

1 相続財産

   「相続財産」…原則として被相続人の財産に属した一切の権利義務(民896条)

   別表1参照

 

2 契約上の地位の承継

⑴ 使用貸借の貸主の地位

最三小判平成8年12月17日(民集50巻10合2778頁)

「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定されるまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認される…」

被相続人と同居していた共同相続人のことを、相続開始後、相続財産である建物から直ぐに追い出すことはできないし、賃料をとることもできない。

⑵ 預金契約上の地位

① 預金口座に振り込み送金された金銭、預金の元金から生じる利息、遅延損害金の帰属

→相続分に応じて当然分割

② 共同相続人の一人による被相続人名義の預金口座の取引経過開示の可否

→共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、取引経過の開示を求める権利の単独行使が可能(民264条、252条但書)

⑶ 貸金庫契約の借主の地位

① 貸金庫契約

銀行が金庫室の一区画につき取引先のための鍵のかかるスペース(貸金庫)を提供し、取引先が貴重品等の保管場所として使用する契約(金庫室内のキャビネットの賃貸借契約)

② 貸金庫契約の借主が死亡した場合の実務上の取扱い

賃借人としての地位が相続される。銀行は、「貸金庫の開披」を処分行為ととらえる。

銀行は、被相続人の戸籍謄本により相続人を確認し、相続人全員の印鑑証明書を求め、相続人全員の立ち合いによって、貸金庫の開扉と格納品の搬出を認める。

遺産分割調停では、相続人の一人が代表で貸金庫の開披及び財産の保管することに他の相続人が合意すれば、中間合意調書を作成の上、任意に委任状を提出してもらい、開披する。

③ 事実実験公正証書 相続人の嘱託を受けた公証人が貸金庫を開披・点検の結果を証書に記録し、その記載の正確なことを確認した嘱託人と共に署名押印し、完成させた公正証書。

  

3 相続財産の管理

⑴ 意義

相続が発生してから相続人が確定し、遺産分割により具体的な遺産が決まるまでの間、遺産の保存、利用及び改良行為を行うこと

⑵ 期間別

① 熟慮期間中 民918条参照 

② 単純承認後、遺産分割が終了するまで所有権法の共有に関する規定 民249条、252条、251条 経費は民885条で相続財産負担

⑶ 相続財産管理人 相続人全員の合意、家庭裁判所による選任

 

第2 遺産の範囲の確定

1 「遺産分割の対象となる財産」の範囲の確定

⑴ 「遺産分割の対象財産」の範囲

  「相続の対象となる財産」≠「遺産分割の対象となる財産」

  相続の対象となるが、遺産分割の対象とならない財産。

  相続の対象とならないが、遺産分割の対象としてよいか問題になる財産。

⑵ 「遺産分割の対象財産」となるかにつき問題になることが多いもの

  別紙2参照

 

2 「遺産分割の対象」から除外される財産

⑴ 金銭債務(相続開始前の債務)→法定相続分に応じて当然承継

⑵ 葬儀費用、香典、祭祀財産、遺骨、遺産管理費用

 

3 遺産の範囲を確定するための調査方法

⑴ 調査の嘱託

①根拠 事実の調査として行う調査の嘱託((審判)家事法62条、(調停)同258条)

証拠調べとして行う調査の嘱託(家事法64条1項,民訴法186条準用)

②当事者等への事実調査の通知義務 (審判)家事法70条 (調停)義務なし。裁量。

③預貯金に関する調査の嘱託

ア 嘱託先の特定 嘱託先(金融機関の支店名)、口座の名義人名

イ 嘱託事項の特定 1回完結できるように特定を図る必要

ウ 被相続人以外の名義(第三者)の場合は、名義人の同意

エ 費用 金融機関によっては、調査手数料を請求される

④ 税務署に対する相続税申告書の調査嘱託は拒否される。

当事者に相続税申告書の控え提出を求める。

⑵ 文書提出命令 家事事件手続法64条1項、258条1項で原則として証拠調べに関する民訴規定を準用

⑶ 資料の開示

①金融機関が特定できたが、資産内容を裏付ける取引明細書の開示を相手方が拒否した場合

  →金融機関に問合せ。相続人に対しては、資料の開示に応じるケースあり。

②金融機関と顧客との取引履歴が記載された明細表の開示

  →文書提出命令で取得可能

  

第3 遺産の評価

1 評価と分割方法

現物分割(遺産を現物で分割)及び代償分割(特定の相続人が遺産を取得し、他の相続人に対し代償金を支払う)の場合には、他の遺産の取得や代償金の存否・金額などの判断資料として評価が必要。

換価分割及び共有分割の場合は、原則として評価は不要。しかし、特別受益寄与分が問題となる場合は、みなし相続財産を算出するために、分割時の他に相続開始時の評価が必要なことあり。

 

2 評価の時点

基本的には、評価の時点は遺産分割時(現実に分割する時点)。ただし、特別受益寄与分が問題となる場合は、「みなし相続財産」算出のため、相続財産開始時の評価も必要となる。

 

3 不動産評価の公的基準

⑴ 公示価格(地価公示価格)

国土交通省の土地鑑定委員会が特定の標準値について毎年1月1日を基準日として公示する価格。一般の土地取引に指標を提供、公共事業の用に供する土地の取得価格の算定等、相続税評価及び固定資産是評価の基準とされている。売り手、買い手の双方に特殊な事情がない取引において成立すると認められるいわゆる正常な価格。評価方法は、原則として、価格の三要素である「市場性」「収益性」「費用性」からアプローチする取引事例比較法、収益還元法、原価法の3方式を総合して算定。

⑵ 都道府県地価調査標準価格(地価調査標準価格)

都道府県知事が毎年7月1日を基準日として公表する価格。林地の基準値もあるので、山林の評価では参考となる。

⑶ 固定資産税評価額

地方税法349条による土地家屋課税台帳等に登録された基準年度の価格又は比準価格。

3年に1回評価替え、価格が下落したと認める場合には修正(時点修正)を加えられる。

固定資産税、都市計画税、不動産取得税、訴額算定等の基準とされている。

土地の固定資産税評価額は、公示価格の70%を目処に設定されている。ただし、個別事案においては、適正な時価と乖離することもありうる。

⑷ 相続税評価額(いわゆる路線価)

路線(道路に面している標準的な間口、奥行距離を有する直角四辺形の土地)につけられた1㎡あたりの評価額(単位千円)。

財産評価基本通達により、相続税、贈与税などの算出の基準として、毎年その年の1月1日時点の価格が対象土地の地目事に路線価方式(市街地的形態を形成する地域)、倍率方式(市街地以外の地域で固定資産評価額の倍率を乗ずる方式)のいずれかにより算定され、毎年8月半ば頃に各税務署単位で国税庁から公表される価格。路線価を算定として評価合意を得ることが多い。

 

4 不動産の評価

⑴ 底地(借地権負担付きの土地)

底地(宅地について借地権が付着した場合の当該宅地の所有権)の価格は、調停の過程では、更地価格から借地権割合を控除して評価する。

⑵ 借地権

借地権価格は、更地価格に借地権割合を乗じて評価するのが通例。借地権割合は、路線価の右隣にアルファベット記号で対応表示される。A→90%からG→30%

⑶ 使用借権付建物 

競売不動産や遺産分割評価実務においては、堅固建物である場合は建付地価格の20%、非堅固建物の場合は10%を建物価格に加算することとされている。

⑷ 使用借権の負担のある土地

上記の割合を建付地価格から控除し、底地価格を求める。

⑸ 借家権、貸家、貸家建付地についての簡易な評価方法

財産評価基本通達において定められた貸家及び貸家建付地の評価方法が参考となる。

⑹ 建物の評価方法

原価法(再調達原価から経年減価、観察減価を行う)によって評価する。

中古建物は土地又は土地利用権と一体となって取引されるので、一体の取引価格から建物価格だけを区分することは困難で、中古建物の市場価格を認識することは極めて難しい。

5 預貯金、株式、動産の評価

⑴ 預貯金 遺産分割時の預金通帳、残高証明書により金額把握

⑵ 株式

① 上場株式、店頭登録銘柄株、店頭管理銘柄など相場のある株式

→新聞、各証券取引所発行の月報等により価格を確認できる

② 非上場株式 

→当事者で価格の合意。合意不成立の場合は、公認会計士等の専門家の鑑定。

⑶ 動産 

→当事者の合意。合意不成立の場合は、美術品商等の意見、オークション落札額、美術の年鑑等に記載の評価額を参考に評価。

 

6 鑑定その他

⑴ 不動産の評価

不動産の評価について争いがあり、当事者に合意が成立しない場合、不動産鑑定の専門家である不動産鑑定士を鑑定人に選任して、評価を行う(家事法64条1項、民訴212条以下)。

⑵ 不動産、非上場株式などの評価

家事調停委員(専門委員)の活用 (不動産鑑定士公認会計士の資格を有する調停委員)