未来創造弁護士法人

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【第7回SUC三谷会】 平成16年判例研究

私が司法試験に合格したのが平成8年。それから15年経っているのですね。 試験に合格するまでは、判例は教科書や講義で学ぶものでした。実務家になると、判例を新聞や判例雑誌の速報から学ぶようになります。 改めて平成16年の重要判例を並べて読むと、「あぁ、この事件は大きく報道されたなぁ」などと当時を思い出し、感慨に耽ったりします。

第7回SUC三谷会(平成16年度)

23.4.7 担当:滝島

1 憲法7(東京高裁 平成16年3月31日決定 保全抗告事件) 【公人の親族のプライバシーと表現の自由週刊文春事件―】 本件記事は、一私人の離婚という全くの私事を、ことさらに暴露したものというべきであり、プライバシーの権利を侵害したものと解する。一方、離婚それ自体は、日常生活上、人はどうということもなく耳にし、目にする情報のひとつにすぎない。本件記事は、憲法上保障されている権利としての表現の自由の発現・行使として、積極的評価を与えることはできないが、表現の自由は、民主主義体制の存立と健全な発展のために必要な、憲法上最も尊重されなければならない権利である。出版物の事前差止めは、この表現の自由に対する重大な制約であり、これを認めるには慎重な対応が要求される。本件記事は、相手方らのプライバシーの権利を侵害するものではあるが、当該プライバシーの内容程度にみると、その事前差止めを認めなければならないほど、相手方らに「重大な著しく回復困難な損害を被らせるおそれがある」とまでいうことはできない。

2 憲法8(最高裁第一小法廷 平成16年11月25日判決) 【放送法4条に基づく訂正放送の請求と表現の自由】 放送事業者がした真実でない事項の放送により権利の侵害を受けた本人等は、放送事業者に対し、放送法4条1項の規定に基づく訂正又は取消しの放送を求める私法上の権利を有しない。

3 行政法5(最高裁第三小法廷 平成16年4月27日判決) 【鉱山保安法に基づく規制権限の不行使責任―筑豊じん肺訴訟―】 通商産業大臣は、遅くとも、昭和35年3月31日のじん肺法成立の時までに、じん肺法制定の趣旨に沿った石炭鉱山保安規則の内容を見直しして、石炭鉱山においても、有効な粉じん発生防止策を一般的に義務づける等の新たな保安規制措置をとったうえで、監督権限を適切に行使し、粉じん発生防止策の速やかな普及、実施を図るべき状況にあったというべきであるとして、国家賠償請求が認容された事例。  *除斥期間の起算点については後述の民法9で紹介

4 行政法7(最高裁第二小法廷 平成16年10月15日判決) 【熊本水俣病の拡大と国・県の責任―熊本水俣病関西訴訟―】 通商産業大臣は、昭和34年12月末には、規制権限を行使して、チッソに対し水俣工場のアセトアルデヒド製造施設からの工場排水についての処理方法の改善、当該施設の使用の一時停止その他必要な措置を執ることを命ずることが可能であり、しかも、水俣病による健康被害の深刻さにかんがみると、直ちにこの権限を行使すべき状況にあったと認めるのが相当である。 国が水俣病による健康被害の拡大防止のためにいわゆる水質2法に基づく規制制限を行使しなかったこと、並びに熊本県水俣病による健康被害の拡大防止のために同県の漁業調整規則に基づく規制制限を行使しなかったことが、それぞれ国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例。

5 民法1(最高裁第二小法廷 平成16年4月23日判決) 【マンション管理費・特別修繕費債権の消滅時効期間】 マンションの管理組合が組合員である区分所有者に対して有する管理費及び特別修繕費にかかる債権が、管理規約の規程に基づいて、区分所有者に対して発生するものであり、その具体的な額は総会の決議によって確定し、月ごとに支払われるものであるときは、具体的な額に増減があるとしても、当該債権は民法169条所定の債権にあたる。

6 民法3(最高裁第一小法廷 平成16年11月18日判決) 【分譲住宅の譲受人が価格決定の適否を検討する上で重要な事実について譲渡人の説明がなかったことによる慰謝料請求権の発生】 住宅・都市整備公団は、優先購入者に対し、一般公募を直ちにする意思がないことを全く説明せず、これにより分譲住宅の価格の適否について十分に検討して契約を締結するか否かを決定する機会を奪ったものであって、当該説明をしなかったことは信義誠実の原則に著しく違反し、慰謝料請求権の発生を肯認しうる違法行為と評価することが相当である。

7 民法7(最高裁第一小法廷 平成16年7月15日判決) 【法的な見解の表明と名誉棄損の成否】 法的な見解の表明それ自体は、判決等により裁判所が判断を示すことができる事項に係るものであっても、事実を摘示するものとはいえず、意見ないし論評の表明にあたる。意見ないし論評については、その内容の正当性や合理性を特に問うことなく、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、名誉棄損の不法行為が成立しないものとされているのは、その事由が民主主義に不可欠な表現の自由の根幹をなすものだからである。(本件は、原告が漫画家である被告の漫画のカットを無断で採録したことにつき、被告が原告の本を「ドロボー本」と記載するなどした。なお、別訴で、著作権法違反はなしとされた。)

8 民法8(最高裁第二小法廷 平成16年11月12日判決) 【暴力団組長の使用者責任暴力団にとって対立抗争が生ずることは不可避であり、本件暴力団においては、資金獲得活動に伴い発生する対立抗争における暴力行為を賞揚していたことに照らすと、本件暴力団の下部暴力団組織における対立抗争においてその構成員がした殺傷行為は、本件暴力団の威力を利用しての資金活動に係る事業の執行と密接に関連する行為というべきであり、本件暴力団の組長は使用者責任を負う。

9 民法9(最高裁第三小法廷 平成16年4月27日判決) 【民法724条後段の除斥期間の起算点】 724条後段の除斥期間は、加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には、加害行為の時がその起算点となるが、身体に蓄積した場合に人の健康を害することになる物質や、一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害のように、当該不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に発生する場合には、当該損害の全部または一部が発生したときが除斥期間の起算点となる。

10民法11(最高裁第二小法廷 平成16年10月29日決定) 【死亡保険金請求権と特別受益の持戻し】 養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと解するのが相当であるが、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が同条の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、特別受益に準じて持ち戻しの対象となる。特段の事情の有無については、保険金の額、この額の遺産総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人との関係、各相続人の相続実体等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。

11商法6(最高裁第一小法廷 平成16年7月1日判決) 【会計帳簿等の閲覧請求における請求の理由】 請求の理由は、具体的に記載されなければならないが、その記載された請求の理由を基礎付ける事実が客観的に存在することについての立証を要すると解すべき法的根拠はない。

12民訴2(最高裁第三小法廷 平成16年5月25日決定) 【文書提出命令 刑訴法47条「訴訟に関する書類」】 刑事訴訟法47条所定の「訴訟に関する書類」に該当する文書であっても、当該文書が民事訴訟法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当し、かつ、当該文書の保管者によるその提出の拒否が当該保管者の有する裁量権の範囲を逸脱し、又は濫用するものであるときは、裁判所は、その提出を命ずることができる。

13民訴3(最高裁第二小法廷 平成16年11月26日決定) 【文書提出命令 民訴法220条4号ハ・二】 ①弁護士を構成員に含む調査委員会報告書が証言拒絶該当事由記載文書にあたらないとされた事例。 ②保険管理人によって設置された調査委員会作成文書が四号ニ所定の文書にあたらないとされた事例。

14民訴4(最高裁平成16年7月6日第三小法廷判決) 【共同相続人間における相続人の地位不存在確認の訴えと固有必要的共同訴訟】 共同相続人間における相続人の地位不存在確認訴訟は、共同相続人全員による固有必要的共同訴訟である。

15刑法3(最高裁第三小法廷 平成16年1月20日判決) 【被害者を利用した殺人】 被告人は、事故を装い被害者甲を自殺させて多額の保険金を取得する目的で、被告人を極度に畏怖して服従していた甲に対し、犯行前日に、漁港の現場で、暴行、脅迫を交えつつ、直ちに車ごと転落して自殺することを執拗に要求し、猶予を哀願する甲に翌日に実行させることを確約させるなどし、被告人の命令に応じて車ごと海中に飛び込む以外の行為を選択することができない精神状態に陥らせ、本件当日、漁港の岸壁上から車ごと海中に転落するよう命じ、自らを死亡させる現実的危険性の高い行為に及ばせたのであるから、甲に命令して車ごと海に転落させた被告人の行為は殺人罪の実行行為にあたる。甲には被告人の命令に応じて自殺する気持ちがなかった点は被告人の予期に反していたが、被害者に対し死亡の現実的危険性が高い行為を強いたことについては何ら認識に欠けるところはなかったのであるから、被告人につき殺人罪の故意を否定すべき根拠はない。

16刑法4(最高裁第一小法廷 平成16年3月22日決定) 【実行の着手と早すぎた結果発生】 行為者らの計画が、クロロホルムを吸引させて甲を失神させた上、その失神状態を利用して、被害者甲を港まで運び自動車ごと転落させて溺死させるというものである場合、第一行為は第二行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであったこと、第一行為に成功した場合、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存在しなかったことや、第一行為と第二行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第一行為は第二行為に密接な行為であり、行為者らが第一行為を開始した時点ですでに殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点に置いて殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。