未来創造弁護士法人

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【第9回SUC三谷会】 平成18年重要判例検討会

第9回SUC三谷会は、平成18年の重要判例の検討会を行いました。 それぞれの弁護士が、過去に取り扱った事案、現在取り扱っている事案と研究している判例をリンクさせて議論をするようになり、検討にますます深みが出てきました。 この積み重ねが必ず、弁護士の武器として、自分の力になります。

SUC三谷会 重判平成18年度版

平成23年6月22日 担当  波田野 馨子

民法5 買戻特約付不動産売買契約が譲渡担保契約と解される場合 (最高裁平成18年2月7日第三小法廷判決) 買戻特約付売買契約の形式がとられていても,目的不動産の占有の移転を伴わない契約は,特段の事情のない限り,債権担保の目的で締結されたものと推認され,その性質は譲渡担保契約と解するのが相当である。

民法7 集合動産譲渡担保設定者による目的動産の処分 (最高裁平成18年7月20日第一小法廷判決) ①動産譲渡担保が同一の目的物に重複して設定されている場合,後順位譲渡担保権者は私的実行をすることができない。 ②構成部分の変動する集合動産を目的とする対抗要件を備えた譲渡担保の設定者が,その目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合,当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り,当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。

民法9 予防的な療法(術式)実施に当たっての医師の説明義務 (最高裁平成18年10月27日第二小法廷判決) 医師が患者に予防的な療法(術式)を実施するに当たって,医療水準として確立した療法(術式)が複数存在するという場合には,その中のある療法(術式)も受けずに保存的に経過を見るという選択肢も存在し,そのいずれを選択するかは,患者自身の生き方や生活に質にもかかわるものでもあるし,また,上記選択をするための時間的な余裕もあることから,患者がいずれの選択肢を選択するかにつき熟慮の上判断することができるように,医師は各療法(術式)の違いや経過観察も含めた各選択肢の利害得失について分かり易く説明することが求められる。 医師らの説明義務違反の有無は,説明をしたか否か,機会を与えたか否か,仮に機会を与えなかったとすればそれを正当化する特段の事情が有るか否かによって判断されることになるというべきである。

民法11 民法724条後段所定の除斥期間の起算点-B型肝炎訴訟 (最高裁平成18年6月16日第二小法廷判決) 民法724条後段所定の除斥期間の起算点は,「不法行為の時」と規定されており・・体に蓄積する物質が原因で人の健康が害されることによる損害や一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる疾病による損害のように,当該不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生する場合には,当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきである(最高裁平成16年10月15日第二小法廷判決)。 B型肝炎を発症したことによる損害は,その損害の性質上,加害行為が終了してから相当期間が経過した後に発生するものと認められるから,除斥期間の起算点は,加害行為(本件集団予防接種等)の時ではなく,損害の発生(B型肝炎の発生)の時というべきである。

民法12 親子関係不存在確認請求と権利濫用 (最高裁平成18年7月7日第二小法廷判決) 戸籍上の親子関係に実親子同様の生活実態があった期間の長さ,実親子関係不存在関係により子及びその関係者の被る精神的苦痛,経済的不利益,あらためて養子縁組することにより嫡出子の身分を取得する可能性の有無,請求をするに至った経緯及び動機,目的,実親子関係不存在が確定されない場合に請求者以外に著しい不利益を受ける者の有無等の諸般の事情を考慮し,実親子関係の不存在を確定することが著しく不当な結果をもたらすときは,実親子関係不存在確認請求は権利の濫用に当たり許されない。

商法3 仕手筋からの脅迫に応じて巨額の金員を交付することとした取締役の責任-蛇の目ミシン株主代表訴訟上告審 (最高裁平成18年4月10日第二小法廷判決) 証券取引所に上場され,自由に取引されている株式について,暴力団関係者等会社にとって好ましくないと判断される者がこれを取得して株主となることを阻止することはできないのであるから,会社経営者としては,そのような株主から,株主の地位を濫用した不当な要求がされた場合には,法令に従った適切な対応をすべき義務を有するものというべきである。 本件においては,取締役らは,仕手筋の言動に対して,警察に届け出るなどの適切な対応をすることが期待できないような状況にあったということはできないから,仕手筋の理不尽な要求に従って,約300億円という巨額の金員を交付することを提案し,これに同意した行為について,過失を否定することは出来ない。

商法6 自家用自動車総合保険約款に基づき車両保険金を請求する場合における事故の偶発性についての主張立証責任の所在 (最高裁平成18年6月1日第一小法廷判決) 本件条項は,「衝突,接触,墜落,転覆,物の飛来,物の落下,火災,爆発,盗難,台風,こう水,高潮その他偶然な事故」を保険事故として規定しているが,これは保険契約成立時に発生するかどうか不確定な事故をすべて保険事故とすることを分かり易く例示して明らかにしたもので,商法629条にいう「偶然なる一定の事故」を本件の保険契約に即して規定したものというべきである。 本件条項にいう「偶然な事故」を商法の上記規定にいう「偶然なる事故」とは異なり,保険事故の発生時において事故が被保険者の意思に基づかないこと(保険事故の偶発性)をいうものと解することはできない。 従って,車両保険金の支払いを請求する者は,事故の発生が被保険者の意思に基づかないものであることについて,主張,立証すべき責任を負わない。

商法7 被保険者の子が胎児であったときに発生した事故により後遺障害が残存した場合と自家用自動車総合保険の無保険者傷害条項に基づく保険金請求 (最高裁平成18年3月28日第三小法廷判決) 交通事故による傷害等の損害について,加害者に対して損害賠償請求ができるときは,約款の無保険車傷害条項に基づき,母の運転時に胎児であった者も,記名被保険者の同居の親族に生じた傷害・後遺障害による損害に準じるものとして,保険金請求ができる。

商法9 団体定期保険に基づく従業員の死亡保険金を受領した会社の遺族に対する保険金相当額の支払義務の有無-住友軽金属工業事件 (最高裁平成18年4月11日第三小法廷判決) 旧商法674条1項本文(保険法第38条)は,他人を被保険者とする生命保険契約にあっては,被保険者が,保険金額,保険契約者,保険金受取人等の当該保険契約の諸要素を考慮の上,これに同意すれば当該保険契約は有効となり,同意しなければ無効となる趣旨であり,また本件団体定期保険における従業員全員の一人であった者との間にその者の遺族に保険金を支払う旨の明示または黙示の合意があったとは認められない。

民訴1 反訴請求債権を自働債権とし本訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁の拒否 (最高裁平成18年4月14日第二小法廷判決) 反訴請求債権を自働債権とし,本訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁は禁じられず,異なる意思表示のない限り,反訴は予備的反訴に変更される。

民訴3 民事訴訟法220条4号ニの文書-銀行の社内通達文書に対する文書提出命令 (最高裁平成18年2月17日第二小法廷決定) 銀行の社内通達文書は,基本的には内部の者の利用に供する目的で作成されたものということができるが,業務の執行に関する意思決定の内容等をその各営業店長等に周知伝達するために作成され,法人内部で組織的に用いられる社内文書であって,内部の意思が形成される過程で作成される文書ではなく,その開示により直ちに自由な意思形成が阻害される性質のものではない。個人のプライバシーに関する情報や営業秘密に関する事項が記載されているものでもない。 本件各文書は,民訴220条4号二所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」には当たらない。

民訴5 仮差押命令の送達前になされた振込依頼に基づく仮差押命令送達後の振込みによる弁済を仮差押債権者に対抗することの可否 (最高裁平成18年7月20日第一小法廷判決) 先日付振込み依頼後に仮差押命令の送達を受けた第三債務者は,原則,送達後の振込みにより仮差押えに対抗できず,送達受領時点において,第三債務者に人的又は時間的余裕がなく,振込依頼を撤回することが著しく困難であるなどの特段の事情が有る場合に限り,送達後の振込みにより仮差押えに対抗できる。

民訴6 転付命令における被転付適格-券面額 (最高裁平成18年4月14日第一小法廷決定) 委任者の受任者に対する前払費用についての返還請求権は,当該委任事務の終了前においては,その債権額を確定することができないのであるから,民事執行法159条1項にいう券面額を有するものとはいえず,転付命令の対象となる適格を有しないものと解すべきである。

民訴9 破産者が破産手続中に自由財産の中から破産債権に対して任意の弁済をすることの可否 (最高裁平成18年1月23日第二小法廷判決) 破産者は,破産手続中に自由財産の中から破産債権に対して任意の弁済をすることは妨げられないが,破産者がした弁済が任意の弁済に当たるか否かは厳格に解すべきであり,少しでも強制的な要素を伴う場合には任意の弁済に当たらない。 地方公務員共済組合の組合員の破産手続中に自由財産である退職手当の中から組合の破産債権に対して地方公務員等共済組合法115条2項所定の方法によりされた弁済が組合員による任意の弁済であるというためには,組合員が,破産手続開始後に,自由財産から破産債権に対する弁済を強制されるものではないことを認識しながら,その自由な判断により,上記弁済方法をもって債務を弁済したものということができることが必要である。

労働7 事件から長期間経過した後になされた懲戒解雇の効力-ネスレ日本事件 (最高裁平成18年10月6日第二小法廷判決) 事件から7年以上経過した後になされた諭旨退職処分とそれに基づく懲戒解雇が,処分時点において企業秩序維持の観点からそのように重い懲戒処分を必要とする客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当なものとして是認することはできない。