未来創造弁護士法人 Blog

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【第10回SUC三谷会】 平成19年度重要判例解説

スキルアップを目的としたSUC三谷会も、早いもので節目の10回を迎えました。メンバーの出席率も毎回ほぼ100%で、すっかり定着した感があり嬉しいです。 最近では、判例の研究に終始せず、各自が過去や現在取り扱っている案件とクロスオーバーしての議論に発展しており、よりリーガルサービスに直結した研究になっていると思います。

三谷SUC会 平成23年7月14日 担 当 佐藤鉄平 平成19年度重要判例解説

憲法1 国立大学の入試と司法審査 ・国立大学法人とその学生との法律関係は、有償双務契約としての性質を有する無名契約たる在学契約である。 ・入学試験による選抜は、優等懸賞広告に近似する法律関係にある。 ・大学の入学試験における合否判定は、本来的には裁判所の審判権が及ばない。入学試験の合否判定に当たり憲法及び法令に反する判定基準によって差別が行われたことが明白である場合には、原則としてその裁量権を逸脱、濫用したものであり、そしてそのような他事考慮がなされたかどうか、なされたとしてその他事考慮が許されるものであるかどうかの問題は、裁判所が具体的に法令を適用して審判しうる。

憲法3 君が代ピアノ伴奏職務命令拒否事件 ・市立小学校の校長が職務命令として音楽専科の教諭に対し入学式における国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏を行うよう命じた職務命令は、「君が代」が過去の我が国において果たした役割に係わる同教諭の歴史観ないし世界観自体を直ちに否定するものではなく、また、教諭に対し特定の思想を持つことを強制したりこれを禁止したりするものではない。 ・教諭は地方公務員として法令等や上司の職務上の命令に従わなければならない立場にあり,前記職務命令は,小学校教育の目標や入学式等の意義,在り方を定めた関係諸規定の趣旨にかなうものであるなど,その目的及び内容が不合理であるとはいえないから、憲法19条に違反しない。

憲法7 私立大学における学問の自由 ・使用者たる学校法人によって設置された大学で教授として勤務している被用者が新聞紙上において行った歴史問題に関する発言を理由として、学校法人が被用者に対して戒告処分を行い、当該被用者の教授の職を解き、本部付事務職員を命ずる旨の辞令を交付するなどした場合に、当該発言が学校法人の社会的評価の低下毀損を生じさせるものとは認め難いときは、当該戒告処分などは合理的理由を欠くものであり、懲戒権の濫用として無効である。

行政法8 関連した2つの「怠る事実」に対する住民監査請求の期間の制限 ・町長が町道の改良工事を請け負った建設業者に対して瑕疵の補修に代わる損害賠償請求権の行使を怠り(第1の怠る事実)、同請求権を除斥期間の経過により消滅させて町に損害を被らせ、これによって町は町長個人に対して損害賠償請求権を有しているところ、町長は同請求権を行使せず、違法に財産管理を怠っている(第2の怠る事実)とする住民監査請求は、第1の怠る事実の終わった日を基準として1年の監査請求期間の制限に服する。

民法2 自動継続特約付き定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効の起算点 ・自動継続定期預金契約は、自動継続特約の効力が維持されている間は、満期日が経過すると新たな満期日が弁済期となるということを繰り返すため、預金者は、解約の申入れをしても、満期日から満期日までの間は任意に預金払戻請求権を行使することができないから、初回満期日が到来しても、預金払戻請求権の行使については法律上の障害がある。

民法7 学納金返還請求と消費者契約法 .私立大学の合格者が、入学金を納付後、入学を辞退したとしても、入学金は大学に入学しうる地位を取得する対価の性質を有していることから、大学はその返還義務を負わない。・私立大学の合格者が、授業料等の学納金を納付後、4月1日の入学年度の始まる前の3月31日までに入学を辞退し在学契約を解除した場合は、大学に生ずべき平均的な損害は存しないから、不返還特約は無効であり、大学は学納金の返還義務を負う。 ・在学契約の解除が4月1日より後になされた場合は、学納金が初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り、大学に生ずべき平均的な損害を超えず、不返還特約は有効であり、大学は学納金の返還義務を負わない。 ・私立大学の推薦入学者が、授業料等の学納金を納付後、3月13日に入学を辞退し在学契約を解除した場合は、特段の事情がない限り、学納金は大学に生ずべき平均的な損害を超えず、不返還特約は有効であり、大学は学納金の返還義務を負わない。

民法8 外国語会話教室の受講契約解除に伴う受講料精算約定の効力 ・外国語会話教室の受講契約の解除に伴い、受講者が契約締結時に支払った受講料の清算を求めた場合において、提供される各役務につき一律の対価額を定める料金規定とは別に解除の場合の高額な対価を設定する清算規定は、実質的には損害賠償額の予定又は違約金の定めとして機能し、受講者による自由な解除権の行使を制約するものであるから、特定商取引に関する法律49条2項1号に基づき無効である。

民法9 法律上の原因なく利得した代替性ある物を売却処分した受益者が負う不当利得返還義務の内容 ・受益者は、法律上の原因なく利得した代替性のある物を第三者に売却処分した場合には、損失者に対し、原則として、売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負う。

民法13 内縁関係にあった叔父の死亡による姪の遺族厚生年金受給資格 ・遺族厚生年金の支給を受けることができる「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に関し、婚姻が禁止される近親者間の内縁関係にある当事者については該当しないが、3親等の傍系血族間の内縁関係にある当事者については、それが形成されるに至った経緯、周囲や地域社会の受け止め方、共同生活期間の長短、子の有無、夫婦生活の安定性などに照らし、反倫理性、反公益性が婚姻法秩序維持等の観点から問題とする必要がない程度に著しく低く、近親者間における婚姻を禁止すべき公益的要請よりも遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するという法の目的を優先させるべき特段の事情が認められる場合は、前記「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に該当する

民事訴訟法4 自己利用文書(1)介護サービスリスト ・介護サービス事業者が、介護給付費等の請求のために審査支払機関に伝送する情報を利用者の個人情報を除いて一覧表にまとめた文書はその記載内容が第三者への開示が予定されていたものということができ、民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない

民事訴訟法5 自己利用文書(2)銀行の自己査定資料 ・銀行が法令により義務づけられた融資先に対して有する債権の資産査定を行う前提として、監督官庁の通達において立入検査の手引書とされている「金融検査マニュアル」に沿って債務者区分を行うために作成し保存している資料は、銀行以外の者による利用が予定されているものということができ、民事訴訟法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない。

民事訴訟法7 証券投資信託の執行方法 ・証券投資信託であるMMFの販売会社が委託者から一部解約金の交付を受けることを条件として効力を生ずる受益者の販売会社に対する一部解約金支払請求権を差し押さえた債権者は、取立権の行使として、販売会社に対して解約実行請求の意思表示をすることができ、委託者によって信託契約の一部解約が実行されて販売会社が一部解約金の交付を受けたときは、販売会社から同請求権を取り立てることができる。

民事訴訟法8 破産管財人善管注意義務破産管財人が、破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際し、破産宣告後の未払賃料等に破産者が差し入れていた敷金を充当する旨の合意をし、賃料等の現実の支払を免れた場合は、敷金返還請求権の発生が阻害されたことによって破産財団が法律上の原因なく賃料等の支出を免れ、その結果、敷金返還請求権上の質権者が敷金返還請求権の消滅により優先弁済を受けることができなくなるという損失を被ることになるから、破産財団は質権者に賃料等相当額を不当利得として返還すべき義務を負う。 ・破産債権者のために破産財団の減少を防ぐという破産管財人の職務上の義務と質権設定者が質権者に対して負う義務との関係をどのように解するかにつき学説や判例が乏しいこと、破産裁判所の許可を得ていることを考慮すると、破産管財人は悪意の受益者であるということはできない。

労働法2 期限付任用公務員の不再任用 ・国家公務員の任用は、国家公務員法及び人事院規則に基づいて行われ、勤務条件について公法上の規制に服することを前提とする公法上の行為であって、これに基づく勤務関係は公法上の任用関係である。 ・その任用形態の特例及び勤務条件は細部にわたって法定されているのであって、当事者の個人的事情や恣意的解釈によってその規制内容をゆがめる余地はなく、非常勤職員としての地位はその雇用期間が満了すれば当然に終了する。 ・退職した職員を再任用するか否かは任命権者の行う行政処分としての新たな任用行為であって、その裁量に委ねられており、退職した非常勤職員にその行政処分を要求する権利を認めた法規はない。