未来創造弁護士法人 Blog

東京と横浜にある法律事務所で日々奮闘する弁護士と事務局が、気の向いたときや機嫌のいいときに更新する事務所日記です。

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【第5回SUC三谷会】 平成14年判例研究

第5回SUC三谷会。本日は平成14年の判例を研究しました。 司法修習生にも参加してもらいましたが、やはり修習生は持っている知識がフレッシュです。ベテラン組も負けていられません。 勉強会後は、近くのお店に移動して新年会。今年の新年会もこれでおしまいです。さすがに。

SUC三谷会 平成14年度重判 平成23年2月15日 担当 成 田 信 生

行政法7 婚姻関係の破綻と外国人の在留資格最高裁平成14年10月17日:出入国管理法) 【事案】 Xは日本人であるAと婚姻し、Aから離婚を求められていたが拒否していた。在留期間更新申請をしたところ、長年Aと別居状態であることを理由に不許可とした。XはAと別居後生活費をAに請求することはなく、Aと接触をしておらず、婚姻関係修復の可能性も低かった。 【判旨】 「日本の配偶者等」といえるためには、日本の配偶者との間で法律上有効な婚姻関係があることに加え、当該外国人が本邦において行おうとする活動が日本人の配偶者の身分を有するものとしての活動に該当することが必要 婚姻関係が社会生活上の実質的基礎を失っている場合には該当せず、失っているかどうかは客観的に行われるべき

民法1  空クレジットと知らずになした立替金支払債務の保証契約と要素の錯誤(最高裁平成14年7月11日:95条) 【事案】 AとBが共謀のうえ空クレジットを計画し、クレジット会社Xとの間で立替払契約を締結し、YはXに対し、AのYに対する立替払契約に基づく債務について、連帯保証契約をした。YはAB間の計画について不知。XがBに対して立替払をし、Aが分割金の支払いを怠ったため、XがYに対して請求 【判旨】 保証契約は、特定の主債務を保証する契約であるから、主債務がいかなるものであるかは、保証契約の重要な内容である。商品代金の立替払契約に基づく債務の諸証人の意思表示は、前提としての売買契約が存在しない「空クレジット」の場合において、善意であるときは、その要素に錯誤がある。

民法2  他人の土地を経由しなければ給排水できない宅地所有者による他人設置給水設備の使用権(最高裁平成14年10月15日:220条、221条) 【事案】 Xが所有している土地は、造成住宅地内の宅地であり、その土地から県道に出るまでに、相当の距離があり、市が所有する道路を使用する必要があった。その道路下にYが給排水管設備を設置(県道下にある排水管と造成宅地内にある各区画の排水設備を接続するもの)し、Xがその給排水管設備の使用の承諾を求めた。 【判旨】 宅地の所有者は、他の土地を経由しなければ水道業者の敷設した配水管から当該宅地に給水を受け、その下水を公流又は下水道まで排出することができない場合において、他人の設置した給排水管をその給排水のために使用することが他の方法に比べて合理的であるときは、その使用により当該給水設備に予定される効用を著しく害するなどの特段の事情のない限り、民法220条及び221条の類推適用により、当該給排水設備を使用することができる。

民法3  賃料債権に対する抵当権者の物上代位による差押えと当該債権への敷金の充当(最高裁平成14年3月28日:372条、619条) 【事案】 AがXに対する債務を担保するため、自己所有建物に抵当権を設定し、登記をした。その後、Aがかかる建物をBに賃貸し、Yへと転貸された。Xは抵当権に基づく物上代位権の行使として、YがBに対して負う賃料債権を差押えた。Yは本件建物を退去し、差押後から退去までの賃料は未払いであった。 【判旨】 抵当権者が物上代位を行使して賃料債権を差押えた場合においても、賃貸借契約が終了し、目的物が明渡されたときは、賃料債権は、敷金の充当によりその限度で消滅する(賃借人は、賃料の消滅を抵当権者に対抗できる)

民法4  共同抵当の目的物件の1個につき同順位の抵当権が存する場合の配当額の計算方法(最高裁平成14年10月22日:392条) 【事案】 XはA会社に対する債権の担保のために、C所有の甲丙不動産及びD所有の乙不動産に共同根抵当を設定した。YはB会社に対する債権の担保のために、D所有の乙不動産及びE所有の丁不動産に根抵当権を設定した。乙不動産のXYの根抵当は同順位とされていた。Xを債権者として甲乙丙が競売され、配当は、Xの債権総額を、まず甲乙丙にその売却代金の割合で割り付け、乙の配当代金を、乙に割り付けられたXの債権額とYの債権総額との割合で計算した。 【判旨】 共同抵当の目的となった数個の不動産の代価を同時に配当すべき場合に、一個の不動産上にその共同抵当に係る抵当権と同順位の他の抵当権が存するときは、まず、当該一個の不動産の不動産価額を同順位の各抵当権の被担保債権額の割合に従って案分し、各抵当権により優先弁済請求権を主張することのできる不動産の価額を算定し、次に392条1項に従い、共同抵当権者への案分額及びその余の不動産の価額に準じて共同抵当の被担保債権の負担を分ける。

民法5  譲渡債権の発生始期のみが記載されている債権譲渡登記の第三者対抗力(最高裁平成14年10月10日:467条) 【事案】 XはA社に対する一切のリース料債権の担保として、AがBらに対して有する現在及び将来の報酬債権について、被担保債権の残額に充までの金額部分を譲り受ける旨の債権譲渡担保契約を締結し、債権譲渡登記を経由した(始期の記載のみ)。その後、YはAに対する貸金債権の弁済に充てるため、AのBらに対する報酬債権のうち、始期と終期を特定した債権の譲り受け、債権譲渡登記を経由した。 【判旨】 既発生または将来発生する債権が譲渡された場合において、債権譲渡登記に債権発生日の始期は記録されているが、終期が記録されていないときには、他にその債権譲渡登記中に始期当日以外の日に発生した債権も譲渡の目的である旨の記録がない限り、譲渡の譲受人は、その債権譲渡登記をもって、始期当日以外の日に発生した債権の譲受けを債務者以外の第三者に対抗することができない。

民法6  サブリース会社の更新拒絶によってサブリース契約が終了してもテナントは使用収益を継続することができる(最高裁平成14年3月28日:1条) 【事案】 Xはサブリース会社Aに一括してビルを賃貸し、本件ビルを一括若しくは分割して第三者に転貸することを予め承諾した。Aは、Bに対して本件ビルの一部を転貸し、さらにKに再転貸された。その後、Aが撤退し、Xに対して、賃貸借契約を更新しない旨の通知をし、Xは、B及びKに対して期間満了により終了する旨の通知をした。その後Kに対して会社更生手続の開始決定がなされ、Yが管財人として選任された。XがYに対して、所有権に基づいて転貸部分の明渡しと賃料相当損害金を求めて提訴。 【判旨】 ビルの賃貸、管理を業とする会社を賃借人とする事業用ビルの賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了した場合において、賃貸人は、信義則上賃貸借契約の終了をもって再転借人に対抗することができない

民法9  民法724条にいう被害者が損害を知ったときの意義(最高裁平成14年1月29日:724条) 【事案】 平成7年7月25日、XはYらに対して、新聞記事(昭和60年9月13日付け)による名誉毀損を理由に損害賠償請求。Xは平成4年7月9日には、本件記事が掲載された可能性が高いことを知っており、記事掲載当時から、Xは勾留されていたが、情報収集可能性があった。 【判旨】 「損害を知ったとき」とは、被害者が損害の発生を現実に認識したときをいう

民法10  「相続させる」趣旨の遺言による不動産の取得と登記(最高裁平成14年6月10日:177条、908条) 【事案】 AX夫婦の子Bは、Yらとの間で、借入金の残債務について債務弁済契約公正証書を作成した。一方、AはXに財産を相続させる旨の自筆証書遺言を作成していた。Yらは、Bに対する債権を被保全債権として、Aが生前所有していた不動産につき仮差押命令を得て、Bの法定相続分に対する仮差押の登記をした。また、公正証書に基づいて、競売開始決定を得てBの持分に対する差押えの登記をした。それに対して、Xは仮差押、強制執行の執行排除、第三者異議訴訟を提起。 【判旨】 「相続させる」趣旨の遺言による権利の移転は、法定相続分または指定相続分の相続の場合と本質において異なるところはないから、「相続させる」趣旨の遺言によって不動産を取得した相続人は、その権利を登記なくして第三者に対抗できる

民法11  生命保険の死亡保険金受取人変更と民法1031条(最高裁平成14年11月5日:1031条) 【事案】 Aには妻Xと子供がおり、YはAの父親である。Aは被保険者をAとする生命保険契約を締結し、保険金受取人をXとしていたが、不仲になったために、受取人をXからYに変更した。Xらが受取人の変更が死因贈与契約またはこれと同視すべき無償の死因処分とみるべきであるとして、遺留分減殺請求の意思表示をし、遺留分に相当する保険金の支払請求権を有することの確認請求をした。 【判旨】 自己を被保険者とする生命保険契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為は、1031条に規定する遺贈及び贈与に当たるものではなく、これに準ずるものということもできない。

商法6  会社が保険契約者兼保険金受取人となっている生命保険における取締役の故意の事故招致(最高裁平成14年10月3日:保険法51条) 【事案】 X社は、代表者Aを被保険者、Xを保険金受取人とする保険契約を締結した。契約には、「被保険者が、保険契約者又は受取人の故意により、死亡した場合には、Yは保険金を支払わない」という免責条項があった。Aの妻であるBが故意にAの頭部を殴打した結果、Aは死亡した。なお、X社は、ABほか2名の取締役で構成され、Aは代表取締役として業務を支配していたが、Bの役割は補助的なもので経営に関与していなかった。 【判旨】 保険契約者または保険金受取人が会社である場合、取締役の故意による事故招致会社の行為と同一のものと評価できる場合には免責条項に該当する。

民訴2  禁治産者宣告及び後見人選任の審判に対する不服申立の可否(東京高裁平成12年4月25日) 【事案】 Aは脳血管性痴呆と診断され、その子供であるCが禁治産宣告などを申し立てたが、申立を取下げ、Cの長女であるXがAについて禁治産宣告及び後見人選任の審判を申し立てた。原審は、Aを禁治産者とし、後見人としてDを選任した。それに対して、Xが即時抗告。 【判旨】 禁治産者宣告の申立を却下する審判に対して即時抗告を申し立てすることができるのみであって、宣告の審判に対して即時抗告を申し立てることはできない。また、禁治産宣告と後見人選任が同時にされた審判にたいする即時抗告において、禁治産宣告が相当であるときは、抗告裁判所は、原審判中の後見人選任の部分につき、その当否を審査することはできない。

民訴3  藁の上からの養子として虚偽の出生届出をした戸籍上の母が提起した親子関係不存在確認の訴えの適否(東京高裁平成14年1月16日) 【事案】 Xら夫婦は実子でないAを同夫婦の嫡出子として出生届をし、A及びその妻Cと子供と円満に生活をしていた。他方XらにはBが長女として出生届されており、Bの長女はXらの養女となっていた。Aの死亡後、Xの財産管理を巡って、BとCとの間で争いが生じ、Xら及びBは検察官Yを相手として、AとXらとの間の親子関係不存在の確認を求めた。 【判旨】 何の帰責事由もないAの妻子であるCらに過大な精神的及び財産的負担を強いることとなり、その回復手段もないのであるから、戸籍の正確性、真実性を確保すべきとの要請を考慮しても一般社会通念上許容することのできない不当な結果をもたらすので、権利の濫用として許されない。

民訴5  抵当権の物上代位の目的となる債権に対する転付命令の効力(最高裁平成14年3月12日:民法372条、民執法160条)    【事案】 AのB(県)に対する土地及び建物の移転保証金債権について、Aの債権者であるXがその一部を差押え、転付命令を取得した。これに対して、上記転付命令が第三債務者Bに送達されてから、建物に抵当権を有するYらが物上代位のための差押えの申立をし、差押命令は、転付命令の確定前にBに送達された。執行裁判所は、物上代位権者を転付債権者に優先させる配当表を作成したので、Xが配当異議の訴えを提起した。 【判旨】 転付命令が第三債務者に送達されるまでに抵当権者が被転付債権の差押えをせず、その後差押命令及び転付命令が確定したときは、転付命令が第三債務者に送達されたときに被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ、抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできない。

民訴6  物上代位権の行使としてされた差押命令に対する執行抗告の理由(最高裁平成14年6月13日:執行法145条、193条) 【事案】 執行裁判所は、抵当権に基づく物上代位権の行使として、抵当不動産の所有者Yが第三債務者Zに対して有する賃料債権につき、債権者の差押命令を発した。これに対して、Zは被差押債権の不存在等を理由に執行抗告を申し立てた。 【判旨】 抵当権に基づく物上代位権の行使としてされた債権差押命令に対する執行抗告においては、被差押債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由としてすることはできない。

労働法5 ビル管理業務に従事する労働者の仮眠時間と労基法上の労働時間(最高裁平成14年2月28日:労基32条) 【事案】 Xらは、不動産の管理委託業務を目的とするY社の技術系従業員であり、ビル内のボイラーの監視整備等の業務に従事していた。Xらは、仮眠時間中監視又は故障対応が義務付けられており、何らの事態が生じない限り、仮眠を取ってよいことになっていたが、外出は原則として禁止され、仮眠室の在室が義務付けられていた。なお、Y社では、就業規則規定の労働時間の範囲内で、年間月間の労働時間や休日数を割り当て、通常勤務のほか月1~6回午前9時から翌日午前9時まで24時間勤務に従事していた。1回の勤務につき手当てが支給され、仮眠時間中の業務には時間外手当及び深夜手当てが支給されていた。 【判旨】 実作業に従事していない不活動仮眠時間が労働時間に該当するかどうかは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたかどうかによって決まる。仮眠時間においても、労働契約上の義務として、仮眠室における待機等相当の対応をすることが義務付けられているので、仮眠時間は全体として労働時間に該当する。仮眠時間の賃金支払については労働契約上の合意によるが、仮眠時間が労働時間である以上、使用者は法定時間を超える時間につき、時間外割増賃金、深夜割増賃金を支払う義務がある。 32条の2が適用されるためには、単位期間内の各週、各日の所定労働時間を就業規則において特定する必要がある。

労働法6 新たな条件での日々契約の更新について異議を留めた承諾をした労働者に対する雇止めの効力(東京高裁平成14年11月26日:労契16条) 【事案】 Xらは、Y社において、紹介業者を通じて日々配膳人として労働し、勤務日等は、Y社との調整の上決定されていた。Xらは、14年間配膳人として就労しており、平成8年以降は週5日勤務していた。Xらは配膳人の労働組合に加入しており、Y社とは、賃金等について1年単位で団体交渉を行い、協約も締結していた。Y社は、経営不振となったため、組合と賃金減額等の労働条件を交渉したが決裂した。そこで、Y社は、労働条件を変更し、これに同意しない者とは契約を更新しないことを通知し、Xらは従前の賃金との差額を請求する権利を留保しつつ、変更後の労働条件で就労することは承諾するとの通知をした。その後、Y社は、Xらの就労を拒否したため、Xらが訴訟提起。 【判旨】 ①配膳人との間で日々個別の雇用契約を締結している関係にあったのであるから、XらとY社との間で期間の定めのない雇用契約を締結したとは認められない。 ②ただし、XらとY社との間の雇用の関係等を総合すると、雇用関係のある程度の継続が期待されていたのであり、Xらの雇い止めについては、解雇に関する法理が類推され、社会通念上相当と認められる合理的な理由がなければならない。