未来創造弁護士法人 Blog

東京と横浜にある法律事務所で日々奮闘する弁護士と事務局が、気の向いたときや機嫌のいいときに更新する事務所日記です。

【未来創造弁護士法人 3つのモットー】

1 依頼しなくてもOK 気軽に相談していただけます!
2 スピードは価値 早期解決を最優先します!
3 お客様の希望をじっくり聞きます!専門家の意見をしっかり伝えます!


【第37回SUC三谷会】 マンション法研究

本日は、マンション法の研究。 波田野弁護士と成田弁護士が、コンパクトで濃縮された素晴らしいチューターを務めてくれました。

区分所有法を中心に、標準管理規約、建て替え円滑化法に至るまで、知っておくべきことが多いことを再認識しました。

今回も、充実度100%の素晴らしい勉強会になりました。

ありがとうございました。

マンション法の基礎

1,マンション  2以上の区分所有者が存する建物で,人の居住の用に供する専有部分のあるもの並びにその敷地及び附属施設等のことをいう(マンションの管理の適正化の推進に関する法律第2条1号参照)。

2,マンションに関する法律等 (1)建物の区分所有等に関する法律 (2)マンションの管理の適正化の推進に関する法律 (3)マンションの管理の適正化に関する指針 (4)マンションの建替えの円滑化等に関する法律 (5)マンション標準管理規約(単棟型・団地型) (6)マンション標準管理委託契約書

3,管理組合 (1)区分所有者全員を構成員とする団体のこと。 (2)区分所有者は,マンションを購入した時点で,当然に組合員となる。

4,専有部分と共用部分 (1)専有部分 区分所有権の目的たる建物の部分(区分所有法2条3項) (2)共用部分 専有部分以外の建物の部分,専有部分に属しない建物の附属物及び第4条第2項の規定により共用部分とされた附属の建物(区分所有法2条4項)

5,マンション管理の主体 (1)専有部分は,各区分所有者が管理する。 (2)マンションの共用部分は,区分所有者全員の共有財産であり(区分所有法11条1項),管理組合が管理する。

6,管理規約(区分所有法30条) (1)マンションの管理または使用に関する事項等についての,管理組合の根本規則。 (2)区分所有者の共同の利益を増進し,良好な住環境を確保することを目的として,マンションの区分所有者全員の間において定める。

7,管理組合の行う業務(標準管理規約32条) ①管理組合が管理する敷地及び共用部分等(以下,「組合管理部分」という。)の保安,保全,保守,清掃,消毒及びごみ処理 ②組合管理部分の修繕 ③長期修繕計画の作成又は変更に関する業務 ④建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務 ⑤適正化法第103条に定める,宅地建物取引業者から交付を受けた設計図書の管理 ⑥修繕等の履歴情報の整理及び管理等 ⑦共用部分等に係る火災保険その他の損害保険に関する業務 ⑧区分所有者が管理する専用使用部分について管理組合が行うことが適当であると認められる管理行為 ⑨敷地及び共用部分等の変更及び運営 ⑩修繕積立金の運用 ⑪官公署,町内会等との渉外業務 ⑫風紀,秩序及び安全の維持に関する業務 ⑬防災に関する業務 ⑭広報及び連絡業務 ⑮地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成 ⑯管理組合の消滅時における残余財産の清算 ⑰その他組合員の共同の利益を増進し,良好な住環境を確保するために必要な業務

8,総会 (1)総会 ①管理組合の意思決定機関 ②区分所有法上の「集会」にあたる(区分所有法34条1項)。

(2)開催義務 総会は,年1回の開催が義務付けられている(区分所有法34条2項)。

(3)決議事項 総会では,収支決算及び事業報告,収支予算及び事業計画等について決議を経る(標準管理規約48条)。

(4)事前準備 総会の開催に先立って,報告事項や決議事項の整理・検討,議案書の作成,会場の手配,総会出欠の事前確認,委任状の作成等を行う。

(5)総会招集の通知 ①総会招集の通知の送付手続き ・通知時期 管理規約に定める期間を確保して,各区分所有者に発する。 発する時期については,会日より少なくとも1週間前までに発しなければならず(区分所有法35条1項),この期間は規約で伸縮することができる(標準管理規約43条1項では,2週間前)。 ・宛先 各区分所有者が通知を受けるべき場所を通知していないときは,その区分所有者の所有する専有部分の所在地あてとすれば足りる(区分所有法35条3項前段)。 この規定により通知を発したときは,通常それが到達すべき時に到達したものとみなされる(区分所有法35条3項後段)。

②通知事項 ・一般の議題の場合 →会議の日時,場所,目的(標準管理規約43条1項) ・一定の重要な決議事項を会議の目的とする場合 →会議の目的たる事項だけでなく,その議案の要領も(区分所有法35条5項・標準管理規約43条4項)。 ☆共用部分の変更(著しい変更を伴わないものを除く。) ☆規約の設定,変更及び廃止 ☆建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の復旧 ☆建替え                               等

9,理事会 (1)理事会 管理業務の執行にあたり,具体的な意思決定をする機関

(2)任期 1年が多い。2年での半数交代制も。 ①理事      おおむね10~15戸につき1名選出される。理事会を構成し,理事会の決定により,管理組合の業務を担当する(標準管理規約40条1項)。 ②理事長 区分所有法に定める「管理者」(区分所有法25条1項)。 管理組合を代表し,管理組合の業務を統括するほか,規約や総会決議等により職務として定められた事項を遂行する(標準管理規約38条1項)。 ③副理事長 理事長を補佐し,理事長に事故があるときは,その職務を代理し,理事長が欠けたときは,その職務を行う(標準管理規約39条)。 ④会計担当理事 管理費等の収納,保管,運用,支出等の会計業務を行う(標準管理規約40条2項)。 ⑤監事 管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し,その結果を総会に報告する(標準管理規約41条1項)。 不正があると認めるときは,臨時総会を招集することができる(同条2項)。 また,理事会に出席して,意見を述べることができる(同条3項)。

(3)標準管理規約に定める決議事項 ①54条に定める決議事項  ・収支決算案,事業報告案,収支予算案及び事業計画案(1号)  ・規約及び使用細則等の制定,変更又は廃止に関する案(2号)  ・長期修繕計画の作成又は変更に関する案(3号)  ・その他の総会提出議案(4号)  ・区分所有者から理事長に対する専有部分の修繕等のための承認申請があったときの,承認又は不承認(5号) ・区分所有者等の法令,規約,使用細則等違反行為等に対する是正勧告,指示等(6号) ・総会から付託された事項(7号)

②その他の決議事項  ・理事長,副理事長,会計担当理事の選任(35条3項)  ・理事長の職務(38条1項1号)  ・職員の採用,解雇(38条1項2号)  ・理事長職務の他の理事への委任(38条4項)  ・理事の業務分担(40条1項)  ・臨時総会の招集(42条4項)  ・総会の招集手続きの期間短縮(43条8項)  ・組合員以外の者の総会出席(45条1項)  ・理事会の招集手続(52条3項但書)

10,専門委員会(標準管理規約55条参照) (1)理事会が直面する課題によっては,知識や専門性のある組合員が,諮問機関を構成し,調査・検討を行う方が,専門的,長期的,又は機動的な効果が期待できる場合がある。このような場合に,理事会は,その責任と権限の範囲内において,専門委員会を設置し,課題を調査または検討させることができる(標準管理規約55条1項)。 (2)大規模修繕委員会,規約改正委員会など。

11,管理委託契約 (1)マンション管理業務は,専門的知識を要し,また繁雑であるため,管理組合から管理会社に対し,業務を委託することが多い。管理組合は管理会社と管理委託契約書を締結し,管理会社は契約内容に基づいて業務を行う。

(2)国土交通省は,管理委託契約書のひな形として「マンション標準管理委託契約書」を公表している。これによれば,委託業務の内容は,下記のとおり(標準管理委託契約書3条)。 ①事務管理業務(再委託は不可。標準管理委託契約書4条1項) ・基幹事務 管理組合の会計の収入及び支出の調定,出納,マンションの維持又は修繕に関する企画又は実施の調整 ・基幹事務以外の事務管理業務 理事会・総会支援業務,各種点検・検査等に基づく助言等  ②管理員業務(受付,点検,立会い,報告連絡業務)  ③清掃業務(日常清掃,特別清掃) ④建物,設備管理業務(建物点検・検査,設備の点検・検査)

12,管理費等滞納問題 (1)時効 (2)対応策 ①内容証明郵便による支払い請求 ②支払督促手続き(債務者からの異議申し立てがあれば訴訟へ移行) ③訴訟 ④強制執行  ※区分所有法59条による競売

13,マンションでのトラブル対応 (1)円滑なマンション生活のためには,管理規約や各種細則などによって,共同生活のルールを定め,これを広報し,全体としてこれを守っていく努力をすることが大切である。普段から,居住者間での良好なコミュニティを形成しておき,ルール違反行為をしにくい環境をつくっておくことも有効。

(2)具体的なトラブルの例 ①ペット問題 【東京高判平成6年8月4日・判例時報1509号71頁】 分譲マンションの管理組合において,犬,猫,小鳥等のペット・動物類を飼育することを禁止する規約改正を行ったにもかかわらず,組合員の一人が犬を飼育し続けたため,管理組合が当該組合員に対し,マンション内において犬を飼育することの禁止を求めて,訴訟提起した。

・争点  ⅰマンションでの動物の飼育を,具体的な被害が発生する場合に限定せずに,一律に禁止する管理組合の規定が有効か。  ⅱマンションの管理規約を改正して,動物の飼育を禁止する規定を新設することが,既に犬を飼育している区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすとして,特別決議を要するか。

・結論 ⅰ一律に動物の飼育を禁止する管理規約が当然に無効とはいえない。 ⅱ動物の存在が買い主の日常生活・生存にとって不可欠な意味を有する特段の事情がある場合には,その飼育を禁止することは買い主の権利に特別の影響を及ぼすものといえるが,本件ではその特段の事情を認めるには足りる証拠はない。