未来創造弁護士法人 Blog

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【第2回SUC三谷会】 平成11年判例研究

本日は、第63期の修習生をゲストに7名で研究会。 修習生が知っている判例を弁護士が知らないのでは話にならないですよね。 判例の結論が自分の直感とずれる場合には要注意。裁判所の取る思考回路をよく観察する必要があります。

SUC三谷会 第2回 平成11年度重判 2010.11.11 担当 長田 誠

1 憲法5 小説モデルのプライバシーと小説の公表差止~「石に泳ぐ魚」事件(東京地判平成11年6月22日)の控訴審判決(東京高判平成13年2月15日) モデルの同定可能性について配慮することなくモデル小説を公表した結果、他者の尊厳を傷つけることがあれば法的責任を負うことは当然であり、芸術の名によってもその侵害を容認することはできない。

2 民法2 後順位抵当権者による先順位抵当権の被担保債権の消滅時効の援用の可否(最判平成11年10月21日) 後順位抵当権者の配当額増加に対する期待は、抵当権の順位の上昇によってもたらされる反射的な利益に過ぎないので、後順位抵当権者は先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することはできない。

3 民法3 不動産競売における配当要求と時効中断(最判平成11年4月27日) 不動産競売手続において執行力のある債務名義の正本を有する債権者がする配当要求は、差押え(民147条2号)に準ずるものとして、配当要求に係る債権につき消滅時効を中断する効力を生ずる。

4 民法4 債権質設定者による当該債権に基づく破産申立ての可否(最判平成11年4月16日) 債権が質権の目的とされた場合において、質権設定者は、質権者の同意があるなどの特段の事情のない限り、当該債権に基づき当該債権の債務者に対して破産の申立てをすることはできない。

5 民法5 抵当権者による目的不動産の不法占拠者に対する明渡請求(最判平成11年11月24日) 抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態にあるときは、抵当権者は、抵当権の効力として、抵当不動産の所有者に対して有する、その有する権利を適切に行使するなどして右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を保全するため、民法423条の法意に従い、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができる。 なお、抵当権に基づく妨害排除請求として、抵当権者が右状態の排除を求めることも許される。

6 民法6 買戻特約付売買の目的不動産に設定された抵当権に基づく買戻代金債権に対する物上代位権行使の可否(最判平成11年11月30日) 買戻特約付売買の買主から目的不動産につき抵当権の設定を受けた者は、抵当権に基づく物上代位権の行使として、買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができる。

7 民法7 動産譲渡担保権に基づく物上代位権の行使と債務者の破産(最決平成11年5月17日) 債権者が商品に譲渡担保の設定を受け、同時に、債務者に商品の処分権限を与えていたという事案の下においては、商品に対する譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として、転売された商品の売買代金を差し押さえることができる(債務者の破産宣告後に右差押えがなされた場合も同様。)。

8 民法8 遺産分割協議(事実上の相続放棄)と債権者取消権(最判平成11年6月11日) 遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得る。

9 民法13 遺留分減殺請求の相手方は受贈後の占有により目的物を時効取得しうるか(最判平成11年6月24日) 被相続人がした贈与が遺留分減殺の要件を満たす場合には、遺留分権者の減殺請求により、遺留分を侵害する限度において贈与は失効し、受贈者が取得した権利は右の限度で当然に右遺留分権利者に帰属するに至る。受贈者が民法162条所定の期間、平穏かつ公然に占有を継続し、取得時効を援用したとしても、遺留分権者への権利の帰属が妨げられるものではない。

10 商法4 生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者の取立権に基づく解約権行使の可否(最判平成11年9月9日) 生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は、債務者の有する解約権を行使することができる(保険法60条により解決。)。

11 商法5 保険契約締結から1年経過した後の被保険者の自殺と保険者の免責(山口地判平成11年2月9日)ではなく(最判平成16年3月25日) 生命保険約款中の、保険者の責任開始の日から1年内に被保険者が自殺した場合には死亡保険金を支払わない旨の定めは、1年経過後の被保険者の自殺については、当該自殺に犯罪行為等が介在し、死亡保険金の支払を認めることが公序良俗に違反するおそれがあるなどの特段の事情がない場合には、自殺の動機・目的が保険金の取得にあるとしても、免責の対象とはしない趣旨と解すべき(旧商法680条1項1号、保険法51条1号)。

12 民訴3 土地の共有者が提起する境界確定の訴えの原告適格最判平成11年11月9日) 境界確定の訴えは固有必要的共同訴訟であるから、共有者全員が原告となって訴えを提起するべきであるが、同調しない者がいるときは、その余の共有者は、隣接する土地の所有者とともに同調しない者を被告として訴えを提起することができる。

13 民訴6 銀行の貸金庫の内容物に対する強制執行の方法(最判平成11年11月29日) 貸金庫の内容物は、民執143条に基づいて利用者の銀行に対する内容物引渡請求権を差し押さえる方法により強制執行が可能であり、差押えや取立訴訟において、貸金庫を特定し、それに基づいて貸金庫契約が締結されていることを立証すれば足りる(個々の動産を特定してその存在を立証する必要はない。)。

14 民訴8 主たる債務者の破産と保証人・物上保証人の消滅時効の援用等(①最判平成11年11月9日、②東京高判平成11年3月17日) ①破産者が免責決定を受けた場合には、右免責決定の効力の及ぶ債務の保証人は、その債権についての消滅時効を援用することはできない。 ②法人について破産手続が開始された後破産終結決定が行われた場合、旧破産法366条の13(現253条2項)の趣旨を類推して、法人に対する債権を担保するために設定された根抵当権の効力には影響を及ぼさず、独立して存続することになった根抵当権については、被担保債権ないしその消滅時効を観念する余地はないから民法167条2項の原則に従い20年の時効によって消滅する。

15 労働法4 機長に対する起訴休職処分の効力(東京地判平成11年2月15日) 起訴休職規定の適用が認められるのは、職務の性質、公訴事実の内容、身柄拘束の有無など諸般の事情に照らし、起訴された従業員が引き続き就労することにより、会社の対外的信用が失墜し、又は職場秩序の維持に障害が生ずるおそれがあるか、あるいは当該従業員の労務の継続的な給付や企業活動の円滑な遂行に障害が生ずるおそれがある場合でなければならず、また、休職によって被る従業員の不利益の程度が、起訴の対象となった事実が確定的に認められた場合に行われる可能性のある懲戒処分の内容と比較して明らかに均衡を欠く場合でないことが必要。