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【第4回SUC三谷会】 平成13年判例研究

第4回の勉強会も、定刻を過ぎても議論が止まず、熱い検討会となりました。 慰謝料、遺留分労働法農地法など、受験勉強としては関心の薄かった分野が実務では重要分野になってくることは、興味深いですね。

SUC三谷会  2011/01/13  佐藤鉄平 平成13年度重要判例解説

1 憲法3 東京高裁H13.8.20 一 本来有する労働能力に性別による差は存在しないこと、年少者の場合、多様な就労可能性を有していること、法制度や社会環境、さらには社会の意識等、女子の就労環境をめぐる近時の動向等も勘案すると、年少者の将来の就労可能性の幅に男女差はもはや存在しないに等しい状況にあると考えられること等を考慮すれば、少なくとも義務教育を修了するまでの女子年少者については、逸失利益算定の基礎収入として、男女を併せた全労働者の平均賃金を用いるのが合理的と考えられる。 二 交通事故により死亡した被害者(11歳・女)の逸失利益を算定するに当たっては、死亡時の賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・全労働者の全年齢平均賃金を基礎収入とするのが相当である。

2 民法3 最高裁H13.11.27 弁済供託は、債務者の便宜を図り、これを保護するため、弁済の目的物を供託所に寄託することによりその債務を免れることができるようにする制度であるところ、供託者が供託物取戻請求権を行使した場合には、供託をしなかったものとみなされるのであるから、供託の基礎となった債務につき免責の効果を受ける必要がある間は、供託者に供託物取戻請求権の行使を期待することはできず、供託物取戻請求権の消滅時効が供託の時から進行すると解することは、上記供託制度の趣旨に反する結果となる。そうすると、弁済供託における供託物取戻請求権の消滅時効(10年)の起算点は、過失なくして債権者を確知できないことを原因とする場合も含め、供託の基礎となった債務について消滅時効が完成するなど、供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時である。

3 民法5 賃料債権の上への抵当権者の物上代位と賃借人による相殺(最高裁H13.3.13) 物上代位権の行使としての差押えのされる前においては、賃借人のする相殺は何ら制限されるものではないが、上記の差押えがされた後においては、抵当権の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶところ、物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はない。したがって、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできない。

4 民法6 配当要求をもってする抵当権に基く物上代位の行使(最高裁H13.10.25) 民法372条において準用する同法304条1項ただし書の「差押」に配当要求を含むものと解することはできず、民事執行法154条及び同法193条1項は抵当権に基づき物上代位権を行使する債権者が配当要求をすることは予定していないから、抵当権に基づいて物上代位権を行使しようとする債権者は、他の債権者が申し立てた債権差押事件に対する配当要求の方法によって優先弁済を受けることはできない。

5 民法7 最高裁H13.11.22 遺留分制度は、被相続人の財産処分の自由と身分関係を背景とした相続人の諸利益との調整を図るものである。民法は、被相続人の財産処分の自由を尊重して、遺留分を侵害する遺言について、いったんその意思どおりの効果を生じさせるものとした上、これを覆して侵害された遺留分を回復するかどうかを、専ら遺留分権利者の自律的決定にゆだねたものということができる(1031条、1043条参照)。そうすると、遺留分減殺請求権は、前記特段の事情がある場合を除き、行使上の一身専属性を有すると解するのが相当であり、民法423条1項ただし書にいう「債務者ノ一身ニ専属スル権利」に当たるというべきであって、遺留分権利者以外の者が、遺留分権利者の減殺請求権行使の意思決定に介入することは許されないと解するのが相当である。民法1031条が、遺留分権利者の承継人にも遺留分減殺請求権を認めていることは、この権利がいわゆる帰属上の一身専属性を有しないことを示すものにすぎず、上記のように解する妨げとはならない。なお、債務者たる相続人が将来遺産を相続するか否かは、相続開始時の遺産の有無や相続の放棄によって左右される極めて不確実な事柄であり、相続人の債権者は、これを共同担保として期待すべきではないから、このように解しても債権者を不当に害するものとはいえない。 したがって、遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、これを第三者に譲渡するなど、権利行使の確定的な意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き、債権者代位の目的とすることができない。

6 民法8 最高裁H13.11.22 いわゆる集合債権を対象とした甲・乙間の譲渡担保契約において、譲渡担保の実行までは譲渡人甲の取立権を認めている場合、この場合は、既に生じ、又は将来生ずべき債権は、甲から乙に確定的に譲渡されており、ただ、甲、乙間において、乙に帰属した債権の一部について、甲に取立権限を付与し、取り立てた金銭の乙への引渡しを要しないとの合意が付加されているものと解されるから、甲から債務者丙に対して譲渡担保権を設定した旨の通知があれば、第三者に対する対抗要件民法467条2項)を備えたものということができ、それに加えて譲渡担保権の実行を通知した後は、譲受人乙に弁済すべき旨が記載されていたとしても、その対抗要件としての効力に影響はない。

7 民法9 最高裁H13.11.27 指名債権譲渡の予約につき確定日付のある証書により債務者に対する通知又はその承諾がされても、債務者は、これによって予約完結権の行使により当該債権の帰属が将来変更される可能性を了知するに止まり、当該債権の帰属に変更が生じた事実を認識するものではないから、指名債権譲渡の予約についてされた確定日付のある証書による債務者に対する通知又は債務者の承諾をもって、当該予約の完結による債権譲渡の効力を第三者に対抗することはできない。

8 民法10 最高裁H13.11.27 いわゆる数量指示売買において数量が超過する場合、買主において超過部分の代金を追加して支払うとの趣旨の合意を認め得るときに売主が追加代金を請求し得ることはいうまでもない。しかしながら、同条は数量指示売買において数量が不足する場合又は物の一部が滅失していた場合における売主の担保責任を定めた規定にすぎないから、売主は民法565条の類推適用を根拠として代金の増額を請求することはできない。

9 民法11 最高裁H13.11.27 買主の売主に対する瑕疵担保による損害賠償請求権は、売買契約に基づき法律上生ずる金銭支払請求権であって、これが民法167条1項にいう「債権」に当たることは明らかである。この損害賠償請求権については、買主が事実を知った日から1年という除斥期間の定めがあるが(同法570条、566条3項)、これは法律関係の早期安定のために買主が権利を行使すべき期間を特に限定したものであるから、この除斥期間の定めがあることをもって、瑕疵担保による損害賠償請求権につき同法167条1項の適用が排除されると解することはできない。さらに、買主が売買の目的物の引渡しを受けた後であれば、遅くとも通常の消滅時効期間の満了までの間に瑕疵を発見して損害賠償請求権を行使することを買主に期待しても不合理でないと解されるのに対し、瑕疵担保による損害賠償請求権に消滅時効の規定の適用がないとすると、買主が瑕疵に気付かない限り、買主の権利が永久に存続することになるが、これは売主に過大な負担を課するものであって、適当といえない。したがって、瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行する。

10 民法13 最高裁H13.11.21 土地の賃貸借における敷金は、賃料債務、賃貸借終了後土地明渡義務履行までに生ずる賃料額相当の損害金債務、その他賃貸借契約により賃借人が賃貸人に対して負担することとなる一切の債務を担保することを目的とするものである。しかし、土地の賃借人が賃貸人に敷金を交付していた場合に、賃借権が賃貸人の承諾を得て旧賃借人から新賃借人に移転しても、敷金に関する旧賃借人の権利義務関係は、特段の事情のない限り、新賃借人に承継されるものではない(最高裁昭和52年(オ)第844号同53年12月22日第二小法廷判決・民集32巻9号1768頁参照)。したがって、この場合に、賃借権の目的である土地の上の建物を競売によって取得した第三者が土地の賃借権を取得すると、特段の事情のない限り、賃貸人は敷金による担保を失うことになる。  そこで、裁判所は、上記第三者に対して法20条に基づく賃借権の譲受けの承諾に代わる許可の裁判をする場合には、賃貸人が上記の担保を失うことになることをも考慮して、法20条1項後段の付随的裁判の内容を検討する必要がある。その場合、付随的裁判が当事者間の利益の衡平を図るものであることや、紛争の防止という賃借権の譲渡の許可の制度の目的からすると、借地借家法20条1項による借地権譲渡に関する借地権設定者の承諾に代わる許可をする場合には、裁判所は、旧賃借人が差し入れた敷金が新賃借人に承継されず、賃貸人が担保を失うことも考慮して、同項後段の付随的裁判として、相当額の敷金を差し入れるべき旨を定め、その交付を命ずることができる。

11 民法15 最高裁H13.3.13 交通事故によって脳内出血を起こしていた患者が、搬入された病院において脳内出血に対する適切な治療が行われなかったことにより死亡したという、交通事故と医療事故が順次競合して、そのいずれもが右患者の死亡という不可分の一個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にあって、運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきであり、各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されない。 また、過失相殺は不法行為により生じた損害について加害者と被害者との間においてそれぞれの過失の割合を基準にして相対的な負担の公平を図る制度であるから、本件のような共同不法行為においても、過失相殺は、各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり、他の不法行為者と被害者との間における過失の割合を斟酌することは許されない。 原審は、本件交通事故と本件医療事故の各寄与度は、それぞれ5割と推認するのが相当であるから、被上告人(医療法人)が賠償すべき損害額は、被害者の死亡による弁護士費用分を除く全損害4078万8076円の5割である2039万4038円から本件医療事故における被害者側の過失1割を過失相殺した上で弁護士費用180万円を加算した2015万4634円と算定したのに対し、最高裁は、被上告人の負担すべき損害額は、被害者の死亡による損害の全額(弁護士費用を除く。)である4078万8076円につき被害者側の過失を1割として過失相殺による減額をした3670万9268円から交通事故加害者から葬儀費用として支払を受けた50万円を控除し、これに弁護士費用相当額180万円を加算した3800万9268円となるとした。

(以下は「民法判例の動き」より) 12 民法 最高裁H13.7.10 時効の完成により利益を受ける者は、自己が直接に受けるべき利益の存する限度で時効を援用することができるものと解すべきであるから、被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用できるにすぎない。

13 民法 最高裁H13.2.22 売買の目的である権利の一部が他人に属し、又は数量を指示して売買した物が不足していたことを知ったというためには、買主が売主に対し担保責任を追及しうる程度に確実な事実関係を認識したことを要すると解するのが相当である。 本件のように、土地の売買契約が締結された後、土地の一部につき、買主と同土地の隣接地の所有者との間で所有権の帰属に関する紛争が生起し、両者が裁判手続において争うに至った場合において、隣接地の所有者がその手続中で係争地が同人の所有に属することを明確に主張したとしても、買主としては、その主張の当否について公権的判断を待って対処しようとするのが通常であって、そのような主張があったことから直ちに買主が係争地は売主に属していなかったとして売主に対し担保責任を追及し得る程度に確実な事実関係を認識したということはできない。

14 民法 最高裁H13.3.27 遺言公正証書の作成に当たり、民法所定の証人が立ち会っている以上、たまたま当該遺言の証人となることができない者が同席していたとしても、この者によって遺言の内容が左右されたり、遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりするなど特段の事情のない限り、当該遺言公正証書の作成手続を違法ということはできず、同遺言が無効となるものではない。

15 民法 最高裁H13.3.13 遺言者所有の不動産である「東京都荒川区○○×丁目××番×号を遺贈する」旨の自筆証書遺言は、遺言者が長年居住していた右住所地にある土地及び建物を一体として受遺者に遺贈する旨の意思を表示したものと解するのが相当であり、不動産の所在が住居表示をもって記載されていることなどを理由に、これを建物のみの遺贈と限定して解することはできない。

16 民事訴訟法2 最高裁H13.1.30 取締役会の意思決定が違法であるとして取締役に対し提起された株主代表訴訟において、当該株式会社は、被告が敗訴しても会社の運営に影響を及ぼすおそれがないなど特段の事情がない限り、被告のために補助参加する利益を有する。

17 民事訴訟法5 最高裁H13.12.13 民訴法400条2項の準用する同法79条1項にいう「担保の事由が消滅したこと」とは、担保供与の必要性が消滅したこと、すなわち、被担保債権が発生しないこと又はその発生の可能性がなくなったことをいい、上訴に伴う執行停止の場合については、その後の訴訟手続において担保提供者の勝訴判決が確定した場合又はそれと同視すべき場合をいう。  破産法70条1項本文は、破産債権に基づき破産財団に属する財産に対してされた強制執行等は破産財団に対してはその効力を失う旨を規定するところ、破産宣告当時既に強制執行が終了している場合は、同項本文の適用はないから、既に終了した強制執行は、破産宣告により効力を失うことはない。仮執行宣言は、その宣言又は本案判決を変更する判決の言渡しにより、変更の限度においてその効力を失うものではあるが(民訴法260条1項)、仮執行宣言付判決に基づく強制執行(以下「仮執行」という。)は、終局的満足の段階にまで至る点において確定判決に基づく強制執行と異なるところはないから、破産宣告当時既に終了している仮執行は、破産宣告により効力を失うことはない。  そうすると、仮執行宣言付判決に係る事件が上訴審に係属中に債務者が破産宣告を受けた場合において、仮執行が破産宣告当時いまだ終了していないときは、破産法70条1項本文により仮執行はその効力を失い、債権者は破産手続においてのみ債権を行使すべきことになるが、他方、仮執行が破産宣告当時既に終了していれば、破産宣告によってその効力が失われることはない。よって、仮執行宣言付判決に対して上訴に伴う強制執行の停止又は既にした執行処分の取消し(以下「強制執行停止等」という。)がされた後、債務者が破産宣告を受けた場合には、その強制執行停止等がされなかったとしても仮執行が破産宣告時までに終了していなかったとの事情がない限り、債権者は、強制執行停止等により損害を被る可能性がある。  したがって、仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い担保を立てさせて強制執行停止等がされた場合において、担保提供者が破産宣告を受けたとしても、その一事をもって、「担保の事由が消滅したこと」に該当するということはできない。

18 民事訴訟法6 最高裁H13.4.13 執行裁判所は、抵当権の登記のされている登記簿の謄本等が提出されたときは、抵当権の存否について判断することなく、不動産競売の手続を開始すべきものとされているとともに、抵当権の不存在又は消滅については開始決定に対する執行異議の理由とすることが認められていることにかんがみると、不動産競売の手続において抵当権の不存在又は消滅を主張するにはこの執行異議によるべきものであって、抵当権の不存在又は消滅は、売却不許可事由としての「不動産競売の手続の開始又は続行をすべきでないこと」(同法188条、71条1号)には当たらないというべきだから、抵当権の実行としての不動産競売において、抵当権の不存在又は消滅を売却許可決定に対する執行抗告の理由とすることはできない。

19 民事訴訟法7 最高裁H13.1.25 最先順位の抵当権者に対抗できる賃借権により競売対象不動産を占有している者は、当該不動産に設定された抵当権の債務者である場合においても、その者の債務を担保する抵当権に基づく競売開始決定(二重開始決定を含む。)がされていた場合を除き、引渡命令の相手方とはならない。 最先順位の抵当権を有する者に対抗することができる賃借権により不動産を占有する者であっても、当該不動産が自らの債務の担保に供され、その債務の不履行により当該抵当不動産の売却代金からこの債務の弁済がされるべき事情がある場合には、その賃借権を主張することは、当該抵当不動産の売却を困難とさせ又は売却価額の低下を生じさせて、当該抵当権者及び担保を提供した所有者の利益を害することとなるから、信義則に反し許されないというべきであり、かかる占有者は、当該不動産の競売による買受人に対してその賃借権をもって対抗することができないと解するのが相当である。当該抵当権の実行として競売の開始決定がされているときは、その債務不履行の事実は民事執行法83条1項ただし書にいう「事件の記録上」明らかであるから、執行手続上もその賃借権を主張することが許されない場合に該当するといえる。しかし、当該抵当権の実行としての競売開始決定がされていない場合には、執行事件の記録上は、その債務不履行の事実が明らかということはできず、当該占有は買受人に対抗することができる賃借権によるものというべきである。

20 民事訴訟法8 東京高裁H13.5.24 地方公務員在職中に破産宣告を受けて退職した者が、破産財団に組み入れられなかった退職金債権の一部について、退職金支払機関である千葉県市町村総合事務組合より同人の破産債権者である同県市町村共済組合に同人に係る未返済貸付残金の返済分として払い込まれたことが当該共済組合の不当利得に当たるとして提起した同共済組合に対する不当利得返還請求が、破産法16条は、破産者が新得財産又は自由財産から任意に破産債権を弁済することまで禁じていないが、本件払込みをもって任意での弁済ということはできず当該共済組合の本件払込金受領には法律上の原因がないとして、認容された事例。

21 刑法6 最高裁H13.7.19 請負人が受領する権利を有する請負代金を欺罔手段を用いて不当に早く受領したとしてその代金全額について刑法246条1項の詐欺罪が成立するには、欺罔手段を用いなかった場合に得られたであろう請負代金の支払とは社会通念上別個の支払に当たるといい得る程度の期間、支払時期を早めたものであることを要する。

22 刑事訴訟法3 大阪地裁H12.5.25 未決被拘禁者と弁護人との間の信書につき、拘置所長が、発信の信書は封緘させずに差し出させ、受信の信書は書信係の職員に開披してその内容を確認する限度で閲読させることは適法であるが、同信書の要旨を身分帳簿の書信表等に記録させ、また、同記録を検察官の照会に応じて回答する行為は、例外的事態と解される場合でない限り、刑事訴訟法39条1項と整合するように解釈すべき監獄法及び監獄法施行規則に違反し違法になる(ただし、違憲とまではいえない)とされた事例。

23 労働法1 最高裁H13.3.13 労働組合法14条は、同法が労働協約に規範的効力等の法的効力を付与していることから、その存在及び内容は明確なものでなければならないとの趣旨に立って、書面の作成及び当事者による署名又は記名押印を労働協約の効力の発生要件と定めているものであり、労働組合と使用者との間に労働条件その他に関する合意が成立したとしても、それが書面に作成され、かつ、両当事者が署名又は記名押印しない限り、労働協約としての規範的効力を付与することはできない。

24 労働法3 大阪高裁H13.6.28 一 銀行の始業時刻前における金庫開扉等の始業準備行為、会議及び朝礼の時間が黙示の指示による労働時間に当たるとされた事例。 二 一掲記の銀行において、終業時刻後における業務への従事が常態的であり、勤務終了予定を記載した文書が作成されていたことなどから、終業時刻後少なくとも午後7時までの時間は黙示の指示による労働時間に当たり、また、それ以降でも銀行が時間外勤務を承認した時間は労働時間に当たるとされた事例。

25 労働法7 東京高判H13.6.27 外国の航空会社の日本支社によって管理される客室乗務員として雇用されていた原告が航空会社との間で締結した雇用契約は期間の定めのある契約であっても、期間の更新により実質上期間の定めのない契約と同視できるときは、期間満了による雇止めについて「解雇の法理」の類推適用がなされるべきであるとして、やむをえない特段の事情のない雇止めを無効とし、原告の労働契約上の地位の確認と未払賃金の支払が命じられた事例。

26 国際私法2 東京高裁H13.1.25 死亡慰謝料の算定に当たっては、日本人と外国人とを問わず、その支払を受ける遺族の生活の基盤がどこにあり、支払われた慰謝料がいずれの国で費消されるのか、そして当該外国と日本との賃金水準、物価水準、生活水準等の経済的事情の相違を考慮せざるをえないとして、死亡被害者がスリランカ人であり、その遺族もスリランカ人として同国を生活基盤としており、将来も同様であることが予測できるところ、同国と日本との貨幣価値におよそ10倍近い相違があるとしたうえで、このような経済事情の相違に加えて、事故の態様、被害者の年齢、家族構成、職業その他を考慮して、死亡慰謝料として500万円が認められた事例。